折角10月25日には豊田で弾こうとはりきっていたハイドンのソナタが、台風で音楽会キャンセルとなりお蔵入りになってしまいました。
ハイドンのピアノソナタというと、日本ではソナチネの教材にもっぱら使われていたため子供の弾くつまらない曲の範ちゅうに入ってしまいました。ところがハイドンというのは言うなれば凄い天才で、その曲曲にじつにおもしろいドラマが盛り込まれているのです。例えばある音がフツッと短調のキャラクターを響かせるかと思うと、その音がパッとあかるい長調の世界をひらめかすとか、どうしてこんな1つの音に魔法のような感情をきらめかすことができるのだろうと思わせられます。やればやるほど音楽の不可思議さ、面白さを展開してくれるのです。
音楽とは文字通り音を体感できる音楽会場でその最高の歓びが得られるのですから豊田の会場でご一緒にそれを楽しむのを心待ちにしていただけに本当に残念でした。そのせいか夜中にふっとハイドンの1節などが浮かんできます。
でも12月15日には上野の文化会館でもう1度弾くチャンスがあります。それまでに又ハイドンの心根にもっと近づくべく楽譜と音に大奮闘してみましょう。
〝ハイドンさん此方向いてニコニコしてね〟等と夜中に呟いています。
室井摩耶子