2010-10-21

ピアノの音

すっかりご無沙汰いたしました。
10月8日に漸く第22回目のトークコンサートを済ませ、人心地が着いたところです。曲目はベートーヴェンの第17番〝テンペスト〟とシューマンの〝子供の情景〟でした。何時ものことながら、もう何回も弾いた曲にもかかわらずその作曲家やその曲についても新しい側面を見せてくれて、毎回どうしてこんなことを知らなかったの?とハラハラドキドキの連続です。そうして知った心の深い揺れは、それをどのように聴いてくださってる皆様にお伝えできるか、ご一緒に音楽の感動に身をゆだねる事ができるかは簡単なことではございません。
それにしても、こうやってベートーヴェン(確固とした構成的な音楽)とシューマン(ドイツロマン派)の曲を研究してみると、ピアノという楽器は何て複雑な表現力を持つ楽器だろうと驚嘆してしまいます。
この2曲ともサイゴはサヨナラと霧の彼方に消えていくPP(ピアニッシモ)ですが
そのPPは「小さな音」と言う言葉の範疇を超えた〝響き〟が要求されるのです。それでないと〝物語〟の終焉と言う心理は表現されないのです。ピアニストはその為の訓練されたタッチ、その音を分別する聴覚、その意味を汲み取るデリケートな神経の集中、その他々と集中力を詰め込んだ練り上げる時間がうんと要るというわけです。本当に音楽ってなんと不思議なものでしょう。
それを得る喜びが私の命を支えてくれるのかもしれませんが......

室井摩耶子